Story
この日の我輩、例によって原稿用紙の前でうんうん唸っておった。どうにも筆が進まぬ。時折インク壺に顔を突っ込みたくなるほどに煮詰まっておるのだが、こういう時、脳というやつは「お腹が空いてますよ」と無遠慮に知らせてくる。
気がつけば黄昏どき。街は夕餉の香りに満ち、池袋の西口には人と欲望が交差している。ネオンは人工のホタルのように瞬き、昭和の残滓を引きずるカラオケの哀歌が、どこぞのビルの二階から流れてくる。人は進化したと言いながら、結局やってることは焼き鳥とビールに戻っているのだから、進化とは一体何なのだろう。
さて、西口の雑踏をぶらぶらしていた我輩、ふと鼻腔をくすぐる炭火の香りに足が止まった。「これは鰻だな」と鼻が言った。まさに、直感というやつである。鼻は正直、腹はもっと正直。人間の五感のうち、胃袋に最も忠実なのは嗅覚である。これは明治の世も令和の今も変わらん。
目の前に現れたのは「ウナ鐡」なる暖簾。何やら鉄火場の匂いがするが、れっきとした鰻の専門店である。扉を開ければ、そこはもう熱気と香ばしさの渦中であった。カウンターには仕事帰りのサラリーマンが一人、二人、三人。皆、顔を赤らめ、串を手にしておる。なんとも羨ましい姿だ。これを見て日本の景気は悪いなどとは思えぬ。財務省の官僚にこの光景を見せてやりたいものである。
店員に案内され、カウンターの隅に腰を下ろす。これがまた絶妙な距離感で、他人の会話は聞こえすぎず、厨房の音は程よく届く。空間とは、設計以上に“気配り”が作るのだな。
「ビールを一本」と呟けば、即座に冷えた瓶がやってくる。合わせて頼んだのは、肝串・ひれ串・レバー串という、いわば“内臓三銃士”である。これを炭火で炙ったものを一口。噛むとじゅわっと旨みが溢れ、まるで鰻の魂が舌に乗り移ったような感覚を覚える。旨いという言葉では追いつかぬ、これはもはや「許された暴力」である。
レバー串の苦みと濃さに目を細め、ビールをぐいとやれば、喉が「ありがたや」と言う。最近の世の中、苦いのがダメだとか辛いのが嫌いだとか、感受性が過保護に育ちすぎているように思える。我輩に言わせれば、旨味というのは多少の“陰”があるからこそ深くなるのだ。ビールがなくなると、今度は浦霞を注文して一献やる。美味い酒だ。
そしていよいよ、主役の登場である。鰻丼。朱塗りの器に蓋が載せられ、運ばれてくるその姿、まるで雅楽の舞の始まりのようだ。蒲焼からは鰻の香りが湯気とともに立ちのぼり、目がうるむ。我輩の感動には詩も哲学も必要ない。ただ、腹の底から「うまい」と唸るだけである。
鰻は、関東風のふっくら蒸し。箸を入れればすっと崩れ、口の中ではタレと炭火の香りが交錯する。これは江戸の浪漫である。ご飯との相性は言わずもがな、甘辛のタレが米一粒一粒にしみ込んでおる。米農家に「君たちの努力は無駄ではなかった」と伝えたくなる仕上がりだ。
ふと店内を見渡すと、隣の青年はスマホで「鰻 映え」と検索している。我輩の時代には、食事は“記録”ではなく“記憶”に残すものだったが、現代はどうも胃よりSNSに残すらしい。まことに世知辛い。
食べ終えた後の満足感たるや、まるで人生を一度やり直したような心地すらある。財布の中身を心配することなく飲み食いできるのが嬉しい。これこそが真の「コスパ」ではないか。
店を出ると、池袋の夜はまだ賑やかであった。酔いと満腹感と、ほんの少しの哲学を抱えて、我輩はまた雑踏のなかへと消えていく。人の世はままならぬが、鰻の旨さは変わらぬ。これで良いのである。
店舗情報
うな鐵(うなてつ) 池袋本店 — 基本情報
-
ジャンル:鰻(うなぎ)、居酒屋、鰻串焼きなど
-
所在地・アクセス:東京都豊島区西池袋1-35-7 落合ビル。JR池袋駅西口から徒歩2〜3分、地下鉄丸ノ内線12番口からも近い
-
電話:03-3986-0078
-
営業時間:
-
火~金:11:30〜14:30(L.O. 14:00)、16:30〜22:00(L.O. 21:00)
-
土日祝:11:30〜22:00(L.O. 21:00)
-
月曜日:定休日(年末年始除く)
-
-
席・設備:計75席、カウンター席あり、全席禁煙、個室なし。テイクアウトあり
-
支払い:クレジットカード可(VISA, Master, JCB, AMEX, Diners)。電子マネー・QR決済不可
店の特徴とおすすめポイント
-
老舗のこだわり:1965年創業の伝統を誇る老舗鰻専門店。蒸してから備長炭で焼き上げるスタイルで、ふっくらと柔らかな蒲焼に仕上がっています。
-
鰻串焼きが名物:レバー、肝、カブト串などを“焼き鳥”感覚で楽しめます。価格は1本160〜270円と手頃で、お酒のお供にもぴったり。
-
バリュエーション豊富なうな重:うな重は梅(約1800円)から特松(4500円)まで様々なグレードあり、コスパと満足感のバランスもよい。
-
雰囲気と人気:昼間でもビールがよく出る賑やかな雰囲気。内装は木調で明るく、ファミリーや一人客も入りやすい作りにリニューアルされているとの声あり。
利用者の声
-
「鰻はふわふわで、ご飯の量もちょうどよくとても美味しかった」
-
「うな重や鰻串をさくっと楽しんで出るのが良い」
-
「串とお酒でちょい呑み、次へ行く前の一服」に最適との口コミも。
まとめとおすすめシーン
-
さくっと鰻串で一杯やりたい時:仕事帰りのちょい呑みに最高。カウンターで気軽に楽しめます。
-
お腹空いたらがっつり鰻重:ランチでもディナーでも楽しめるメニュー構成と価格帯。
-
ファミリーや友人と一緒に:明るい雰囲気と禁煙空間で、誰とでも気兼ねなく利用できる。
コメントを投稿するにはログインしてください。