成田山には有名な鰻屋がたくさん 駿河屋

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Story

旅というものは、己の内面を見つめる好機である、と誰かが言った。しかし実際のところ、旅人の多くは腹が減っては戦ができぬとばかりに、内面よりもまず胃袋に焦点を当てる。これは古今東西変わらぬ真理である。

さて、我輩の今回の旅路は、茨城の鹿島より成田山へと向かうものであった。鹿島神宮の霊気を背に、北浦橋梁を渡る電車の上から眺める水面のきらめきは、俗世の煩わしさを一時忘れさせるに十分な美しさである。だが、電車がしばらくして田園風景の中に突入すると、急に現実が戻ってくる。佐倉で乗り換え、揺られることしばし。気がつけば成田山の門前にたどり着いていた。

ここ成田山新勝寺、商売繁盛や家内安全の祈願で知られ、人々で賑わう参道には数々の土産物屋が並ぶ。その香りに混じって、ひときわ鼻をくすぐるのが、あの炭火で焼かれた鰻の匂いである。まるで境内の仏たちまでもが空腹を覚えるかのような魅惑の香である。

成田における鰻の二大巨頭といえば、「駿河屋」と「川豊」である。かつては両店ともに行列必至であったが、近頃は文明の進歩というものが、食いしん坊にも恩恵を与えるようになった。すなわち、整理券システムである。

川豊は、いかにも現代的な対応としてホームページ上で自分の順番が把握できる。一方、駿河屋は紙の整理券に手書きで「12時45分頃」と記すという、いささか牧歌的ながらも温かみのある対応を取る。

どちらが優れているかは好みの問題であろう。とりあえず我輩は、文明と伝統の両方に身を委ねるべく、両方の整理券を手にした。目的はただひとつ、鰻に早くありつくことである。

川豊の順番が先に来そうだったので一旦赴いたが、暑い日差しの中、店先でじりじりと待たされること10分超。文明の利器があろうとも、現場の暑さはAIにもどうにもならぬらしい。苛立ち紛れに目をやると、対面に涼しげな観光案内所が。中には展示、ベンチ、そして冷房。ここを鰻待ちの避暑地にせよとの神仏の導きに違いない。

冷気に癒された我輩は、駿河屋へと舵を切る決意を固めた。

いよいよ入店。通されたのは二階の畳座敷である。靴をビニール袋に入れて持参するあたり、合理と配慮が同居した空間設計。注文したのは、潔く「うな重(並)」。懐事情により「特上」や「特選」は断念せざるを得なかった。後で耳にしたところによれば、「特選」は国産の選りすぐりの鰻を使用しているとのこと。すでに売り切れていたので、選ぼうにも選べなかったと自分に言い聞かせる。

やがて運ばれてきたうな重は、漆塗りの器に鎮座し、蓋を開ければ、ふわりと香ばしき香が立ち上る。ひとくち口に運べば、柔らかな身にタレの甘さが絡み合い、これぞ「夏の福音」といった風情。とはいえ、正直に申せば「感動するほどうまい」ではなく「納得して満足する」味である。鰻が悪いのではない、己の財布の浅さが悪いのだ。

しかし、山椒はひと味違った。ぶどう山椒という珍しきものを添えてくれる。これを軽くひと振りすれば、先ほどまでの「まあまあ」な味わいが、一気に「これはこれでアリ」に昇格するから不思議である。

食後のひとときを座敷で過ごした後、再び成田山の参道を抜けて駅へ向かう。帰路は登り坂、汗が滴る。とはいえ、腹も心も満たされた今となっては、坂もまた一興である。

文明の利器が整った現代でも、やはり人の心を動かすのは、香ばしく焼かれた鰻と、冷房の効いた案内所である。我輩はそう確信しつつ、再訪を誓いながら電車に揺られたのであった。

店舗紹介

【老舗の風格と人情が薫る】成田山門前「駿河屋 成田店」

成田山新勝寺の総門から徒歩わずか数分。古き良き門前町の風情漂う通りに、その風格ある佇まいで旅人を迎えるのが、創業百年を超える老舗うなぎ店 「駿河屋 成田店」 です。

この地で明治時代から続く駿河屋は、成田詣の食文化の象徴とも言える存在。格式張らずとも堂々とした雰囲気があり、暖簾をくぐれば、ふわりと漂う炭火焼きの香りが食欲をそそります。

人情味あふれる整理券システム

多くの観光客が押し寄せる中、駿河屋では昔ながらの「手書き整理券」方式を採用。スタッフが直接、来店予定時刻を記してくれるこの方法は、デジタルでは得がたい温もりを感じさせます。予約不可という潔さもまた、老舗の矜持を感じさせる一面です。

名物・うな重の味わい

駿河屋のうなぎは、炭火で丁寧に焼き上げられ、ふっくらと柔らかく、皮はパリッと香ばしい仕上がり。甘すぎず、コク深いタレがご飯と絡み、まさに江戸前の真髄。スタンダードな「うな重」から、銘柄うなぎを使用した「特選うな重」まで、予算や気分に応じて選べるのも魅力です。

また、山椒には風味豊かな「ぶどう山椒」を使用。香り高く、ほんのひと振りで味わいが一層引き立ちます。

靴袋を持って座敷へ。旅の疲れを癒す空間

座敷に案内されると、靴をビニール袋に入れて持ち歩くという観光地らしい工夫も。広々とした二階の和室でゆったりとくつろぎながら、旅の合間の贅沢なひとときを楽しめます。

成田山観光とともに

うなぎを待つ間は、成田山新勝寺でのお参りや、参道散策もおすすめ。門前の土産物屋や観光案内所なども充実しており、時間を有効に使えるのもこの地の魅力です。成田山への参拝とともに、老舗の味を堪能する。旅の醍醐味とは、こういう瞬間にこそ宿るのかもしれません。

店舗情報

駿河屋 成田店
・住所:千葉県成田市仲町359
・アクセス:JR成田駅・京成成田駅より徒歩10分程度
・営業時間:10:00~16:00(売切れ次第終了)
・定休日:不定休(要確認)
・支払い:現金のみ(2025年現在)

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