上野で散策後は伊豆榮本店で

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Story

上野の朝に蓮が咲く。いや、正確には「咲いていた」のである。梅雨時の湿り気を帯びた空気の中、不忍池の蓮はすでに十時を過ぎたころには、うら若き乙女のごとく瞼を閉じており、私の訪れを待ちわびていた風情は露と消えていた。それでもなお、数輪の呑気な蓮が時を忘れて開いたままでいるのを見ると、まるで原稿の締切を忘れた文士のようで、どこか他人とは思えぬ。今の世の中もまた、時間に追われていながら、その実、何もしていない人間が多い。働き方改革とは名ばかり、蓮の花に学ぶべきなのは案外ビジネスマンかもしれぬ。

とはいえ、蒸し暑さが募る池端に長居は無粋である。太陽が気まぐれに顔を出した瞬間には、あたかも人心掌握に失敗した某政権のように空気が重たくなる。こうなると風流を語る余裕もなく、「風流より風通しが欲しい」という不届きな願いが脳裏をよぎる。涼を求めて池を離れ、昼餉をどこで摂るかと逡巡したが、上野に来たからには「伊豆榮」本店に向かわぬ手はない。

この伊豆榮本店は、不忍池の畔に悠然と佇む老舗である。創業は江戸中期というのだから、もはや老舗というよりは、上野の守護神のごとき風格を持つ。森鷗外や谷崎潤一郎、立川談志までもが常連だったというのだから、もしこの鰻重に文学的な香りが染み込んでいたとしても驚くにはあたらぬ。

本日は「鰻重・竹」を注文。梅雨空をにらみながら、鰻が焼けるのをじっと待つ様は、まるで日本銀行の利上げを待つ株式市場のようである。やがて、朱塗りの重箱が目の前に供され、その蓋を開けた瞬間、金色の照りがこちらを射抜いた。「照りが飛ぶ」とはよく言ったもので、視線すら焦がしそうなその艶やかさは、もはや小説の一節に加えたいほどである。

まずは腹側から一口。タレは実に潔い。醤油と味醂のみで構成されたそれは、どこか政治家の弁明に似て、飾り気がなくて却って信頼できる。いや、政治家の例は不適当か。こちらには確かな旨味がある。半分ほど食したところで山椒をパラリと振る。ピリリとした刺激が舌を起こし、ここでタレを追い打ちすると、今度は醤油の香りが立ち上り、一層の深みを味わわせてくれる。なるほど、これが老舗の技というものか。かような技術があれば、国会中継ももう少し旨味のあるものになるのではなかろうか。

尻尾の部分まで平らげたところで、心地よい満腹感が訪れた。腹は満ち、心もまた豊かとなったが、まだ本日の旅程は終わらぬ。食後の散策に向かった先は、東京国立近代美術館。目当てはデ・キリコ展である。

ギリシャ生まれの画家ジョルジョ・デ・キリコは、太陽なき紺碧の空を描いた男である。街角に漂う影、顔を持たぬ人間たち、止まった時計、消えた列車、燃え尽きた太陽。これらの絵は、まるで現在の日本社会を予見していたかのようだ。どこか懐かしく、しかし何も思い出せぬ風景。あたかもニュースアプリのヘッドラインのように、情報は溢れているのに、実態が何も見えぬ。

出口で一枚の絵と出会った。イーゼルの上に燃え尽きた太陽が描かれている。私はふと思った。「太陽が燃え尽きても、鰻さえあれば大丈夫」と。これを人は俗物というかもしれぬが、それで結構。俗物にしては、なかなか風流な一日ではなかったか。

店舗紹介

伊豆榮本店は、上野・不忍池のほとりに悠然と佇む、江戸中期創業の伝統ある 鰻割烹専門店 です


📍 所在地・アクセス

  • 住所:東京都台東区上野2‑12‑22

  • アクセス:JR上野駅「不忍口」より徒歩約5分。京成上野・地下鉄各線からも便利な立地


営業時間・席数

  • 営業時間:11:00〜21:00(ラストオーダー20:15、ドリンク20:30)

  • 定休日:年末年始(12/31・1/1)のみ。

  • 座席数:約200〜270席、掘りごたつ座敷・テーブル席・広間・個室など多様

  • 禁煙席完備・無料Wi‑Fi・多言語メニューあり(英語・中国語・韓国語)


鰻へのこだわり

  • 使用する鰻は愛知三河一色産の「三河鰻咲」。

  • タレは砂糖不使用、醤油と味醂のみの辛口でキリッとした味わいが特徴 。

  • 江戸前の技法で背開き・蒸し・3度焼きを施す伝統調理。「門外不出の技法」とも称される


料金のめやす

  • ランチ:約4,000円、通常平均6,000円、宴会平均13,000円程度

  • 会席コース(松〜梅など):8,800円〜16,500円程度

  • 個室利用時には飲食代に15%のサービス料がかかる場合あり。


利用シーンと雰囲気

  • 接待・会食・法事・慶事から、一人の食事や家族連れまで幅広く対応

  • 大広間から窓越しに不忍池を望める席もあり、開放感ある景色を楽しめる。


外国人客にも好評

TripAdvisor や Live JAPAN 等では、英語対応・英語メニューもあり、外国人旅行者からも「味・接客共に満足」と高評価

伊豆榮本店は、江戸の風情とともに鰻割烹の極みを味わえる老舗中の老舗。
甘さを抑えキリッとしたタレが、蒸し焼き鰻の香りと甘みを引き立て、
景色・雰囲気・料理・サービスのすべてに、格式と風流が息づいています。


【伊豆榮 本店】
食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13001489/
公式サイト:https://www.izuei.co.jp/

 

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